竹内克也の「GAM論」と日本株への影響

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ANALYSIS / 日本株への意義

竹内克也の「GAM論」と日本株への影響
開示事実と公表済みの分析枠組みを突き合わせる

竹内克也氏は GAM Investments の投資アナリストとして、日本株式戦略の投資判断に関わっています。本稿は、同氏の公表済みの見解と、GAM が開示している会社情報・運用データを突き合わせ、①GAM Investments の現状と今後の展開をどう捉えられるか、②同氏の見解が日本のセクター・個別株にどのような影響を持ちうるかを整理します。

先に結論を述べる:前提の訂正

竹内克也氏は、GAM Investments の経営状況や会社戦略について、公に発言した記録が確認できません。同氏の公表済みのアウトプットは、所属する日本株式チームの投資見解(2024年9月・11月の2本の記事)に限られます。会社の業績、資本政策、事業ポートフォリオ、組織再編について述べた発言は、公開情報の範囲では存在しません。

したがって本稿は、「竹内克也氏本人の GAM 論」ではなく、①GAM が開示している事実と、②竹内克也氏の公表済み分析枠組みを突き合わせた編集部による推論です。両者は本文中で明確に区別し、推論には必ず根拠と留保を付しています。同氏の発言として引用できる記述は、本稿には含まれていません。

この記事の要点
  • 1GAM は2026年6月末時点で AUM 127億スイスフランです。2年間の変革でコスト構造を圧縮し、H1 2026 の実質税前損失は前年同期比30%改善しました。ただし依然として赤字です。
  • 2日本株は「GAM Specialist Active」の中の一事業領域です。旗艦ファンド GAM Star Japan Leaders の純資産は、第三者集計で約49億〜52億円と小規模にとどまります。
  • 3竹内克也氏は GAM 自身については発言していません。本稿の「GAM 論」は推論であり、ご本人の見解ではありません。
  • 4同氏の見解が日本株に与える影響は、4つの経路に分けると性格がまったく異なります。情報発信と運用残高を通じた影響は限定的ですが、アクティビスト運用と中長期の言説は実際に影響しえます。
  • 52024年の記事で「アンダーウエイト」とされた銀行・自動車・商社が、2026年の公表組入上位に現れています。これは要検証の論点です。

01事実と推論の切り分け

本稿を読むうえでの前提を、先に固定しておきます。以下の3種類は、まったく異なる情報です。

区分 内容 本稿での扱い
事実A 竹内克也氏が署名・共著した記事の内容 ご本人の見解として引用できます。ただし共著記事であるため、個人の私見とチーム見解の切り分けは困難です。
事実B GAM が開示した会社情報・運用データ・ファンド組入情報 会社としての事実として扱います。竹内克也氏個人の見解ではありません。
推論 事実Aと事実Bを組み合わせて導かれる含意 必ず「編集部の推論」と明示し、反証可能性を併記します。

02GAM Investments の現状(公開開示)

ここでは事実Bのみを扱います。数値は GAM Holding AG の2026年上半期(H1 2026)決算リリース、および2026年5月の定時株主総会資料に基づくものです。

2-1 資産残高と事業構成

事業領域 2026年
1月1日
資金純
流出入
単一顧客
解約
市場・
為替
2026年
6月30日
GAM Alternatives 1.6 +0.4 - - 2.0
GAM Specialist Active 10.0 -0.3 -0.4 +0.5 9.8
GAM Wealth Management 0.9 -0.1 - +0.1 0.9
合計 12.5 - -0.4 +0.6 12.7

単位:十億スイスフラン(出典:GAM Holding AG の H1 2026 決算リリース)

2026年6月末の AUM は127億スイスフランで、2025年末の125億から増加しました。グロス流入は9億スイスフラン、顧客解約は前年同期から大幅に減少しています。ただし、4億スイスフランの単一顧客(セパレートアカウント)解約を除いたベースでの純流入は、+0.38億スイスフランにとどまります。

構造で見ると、Specialist Active が98億スイスフランと全体の約77%を占める一方、資金流入が最も強かったのは Alternatives(カタストロフィ・ボンド、持続可能な新興国株式、GAM LSA Private Shares)です。つまり、残高の中心は Specialist Active、成長の中心は Alternatives というねじれがあります。

規模感の補足。GAM の AUM は2018年3月時点で1,623億スイスフランでした。現在の127億スイスフランはその1割弱であり、同社が過去数年で事業売却と解約によって大きく縮小したことを示しています。竹内克也氏の見解の「市場への影響力」を議論する際、この規模は決定的に重要です。

2-2 収益と資本

  • H1 2026 の税引前損失は2,400万スイスフラン(前年同期は3,410万スイスフラン)です。改善率は約30%で、主因は人員・プロセス・コスト規律を通じた営業費用ベースの圧縮です。
  • IFRS ベースの税引前損失は2,470万スイスフランです。実質値との差70万スイスフランは、戦略施策に伴う費用です。
  • 依然として赤字です。改善はしているものの、黒字転換は達成していません。
  • 資金調達:NJJ 子会社である Rock Investment SAS との1億スイスフランの融資枠(2027年12月まで利用可能)を維持しています。2026年6月末時点で5,800万スイスフランを実行済みです。同社は追加の財務支援を行う旨の意向書も提出しています。

この構図は、「自力での黒字化」と「株主からの継続支援」の両方に依存している状態と整理できます。長期株主のコミットメントが明示されている一方、融資枠への依存度は無視できません。

2-3 経営体制と戦略の現状

  • 2026年5月の定時株主総会で、Anthony Maarek 氏が取締役会会長に就任しました。2年間の変革を主導した Antoine Spillmann 氏は退任しています。
  • 会長交代時のコメントでは、「当社の潜在力は著しく過小評価されている(materially under-recognised)」と明言されました。
  • 戦略は「フォーカスされたピュアプレイのアクティブ運用・ウェルスマネジメント会社」です。簡素で低コストのオペレーティングモデルへの転換を完了しつつ、投資ケイパビリティの追加と AUM 成長を、固定費を比例的に増やさずに進める方針です。
  • 2025年に続き、法的実体(リーガルエンティティ)構造の整理を継続中です。
  • 2026年下期および2027年に向けた新戦略のパイプラインがあり、新たな運用パートナーとの協議も進行中とされています。

会長交代と「潜在力が過小評価されている」という表現は、変革フェーズの終わりと成長フェーズの始まりを対外的に宣言したものとして読めます。これは会社としての発信であり、竹内克也氏個人の発言ではありません。

03GAM の日本株事業の位置づけ

竹内克也氏が属する日本株事業は、GAM のどの部分に位置するのでしょうか。事実Bから整理します。

区分GAM Specialist Active(株式・債券・マルチアセット)内の「日本株式」領域
歴史GAM 創業1983年。東京オフィスは1997年開設。日本株運用は20年以上の実績
チーム構成Ernst Glanzmann 氏(Investment Director/リードマネージャー)、Lukas Knüppel 氏(Investment Director)、竹内克也氏(Investment Analyst)。2022年11月に Goro Takahashi 氏が Investment Director として参画
旗艦ファンドGAM Star Japan Leaders(アイルランド籍、設定1992年3月)。円建て機関投資家クラスは2015年9月設定
純資産第三者集計で約49億〜52億円(2026年7月〜9月時点)。複数の集計サイト間で数値が一致しません
運用プロセスTOPIX 約2,000社 → 4つの財務フィルター(成長率・収益性・資本集約度・バランスシート構造)で約100社 → 公正価値に対して30%以上の割安で投資 → 20〜30銘柄・均等ウエイト・年1回リバランス・保有期間5年以上
開示上の役職GAM 公式のファンドページでは Investment Analyst として記載。2026年時点の台湾向けファンド開示資料では、運用担当者として Ernst Glanzmann 氏と連名で記載

重要なのは規模です。Specialist Active 全体で98億スイスフラン、その中の日本株ファンドが約50億円(スイスフラン換算で約0.3億、つまり3,000万スイスフラン前後)です。Specialist Active の1%にも満たません。この事実は、「影響力」の議論で決定的な制約条件になります。

運用成績の扱いについて

運用成績は、公表情報の間で数値が大きく食い違うため、本稿では断定的な評価を避けます。

  • ある第三者集計(2026年7月時点、円建てAクラス)では、3年 -0.2%、5年 -18.3% と、同カテゴリー平均(IA Japan:3年 +56.0%、5年 +56.5%)を大きく下回ります。
  • 一方、台湾の販売会社による集計(2026年9月時点)では、1年 +20.2%、年初来 +15.6% と、2026年に入ってからの回復を示しています。

数値の差は、シェアクラス(円建て・ドル建て・ユーロ建て)、費用控除の前後、集計基準日の違いに起因すると考えられます。「長期では同カテゴリーに大きく劣後しているが、2026年は回復している」という方向性以上のことは、公開情報からは断定できません。正確な評価には、GAM 公式の月次運用報告書の確認が必要です。

なお、竹内克也氏が所属するチーム自身が2025年について、「高品質な成長企業であっても短期的な逆風に直面しうることを投資家は思い知らされた。日本ではリスクプレミアムの上昇が、収益力が弱く ROE 改善へのコミットメントが乏しい企業に不釣り合いに重くのしかかり、当戦略もこの影響を受けた」と自認しています。この記述は、業績が振るわなかった事実をチームが認識していることを示しています。

04竹内克也の枠組みを GAM に適用する

ここからは推論です。竹内克也氏の公表済みの分析枠組みを、GAM の事業構造に当てはめると、どのような論点が立つでしょうか。

4-1 方向性が一致している点推論

同氏が共著で示した中心的な主張は、「日本企業は半導体製造装置、ファクトリーオートメーション、ロボティクス、医療機器、デジタル決済といった分野で世界水準の競争力を持ち、独自技術によって顧客の信頼を獲得してきた。したがって投資対象を『それぞれの分野でリーダーになりうる企業』に限定できる」というものです。

この主張の構造は、GAM が会社として掲げる「specialist active management と non-traditional sources of return」というポジショニングと方向性が一致します。実際、GAM の Specialist Active は日本株を含む差別化された株式ケイパビリティを中核に据えており、代替運用との対比で「専門特化」を前面に出しています。竹内克也氏の見解は、所属会社が現在賭けている方向性と矛盾しません。これは推論であり、同氏が会社戦略を支持すると述べた記録は存在しません。

4-2 検証すべき論点:2024年の主張と現在の組入構成推論

ここに、注意して観察すべきギャップがあります。

2024年9月の記事で、竹内克也氏と共著者たちは「自動車セクター、商社、銀行はいずれも当戦略がアンダーウエイトとしている主要バリューセクターであり、収益成長の鈍化が確認されている」と明記していました。

ところが、2026年1月31日時点の公表組入上位10銘柄には、銀行(三菱UFJフィナンシャル・グループ5.52%、三井住友トラスト・グループ5.16%)と自動車(スズキ4.73%)が含まれ、オリックス(5.85%/多角的金融)も入っています。セクター集計(2026年8月時点、第三者集計)でも、銀行が13.68%で最大のセクターウエイトとなっています。

このギャップの解釈は少なくとも3通りあり、本稿では断定しません。

解釈1
2025年前半以降に戦略がバリュー側へも分散しました。2024年9月の記述は、当時のポートフォリオの姿です。
解釈2
「アンダーウエイト」はベンチマーク(TOPIX)対比の相対表現であり、絶対保有がゼロを意味するわけではありません。スクリーニングを通過した銀行が残っています。
解釈3
第三者集計サイトのセクター分類(Banks、Diversified Financials 等)が、GAM 内部の分類と一致していません。

この論点が重要な理由は、「竹内克也氏の見解」を手がかりに日本株のセクター判断をしようとするなら、同氏の言説と実際のポートフォリオが一致しているかを確認する必要があるからです。公開情報の範囲では、2024年9月の言説と2026年初の組入構成は一致していません。ファンドの月次運用報告書で組入・セクター配分の推移を時系列で確認するまで、この点は未解決の論点として扱うべきでしょう。

05日本株への影響:4つの経路

「竹内克也氏の見解は日本株に影響するか」という問いは、影響の経路を分解しないと答えを誤ります。経路ごとに特性と大きさがまったく異なるためです。

経路 メカニズム 現実的な影響度
① 情報発信 GAM 公式サイト上の記事を通じた見解の発信 限定的です。プロ投資家向けの情報提供であり、個人投資家の売買を直接動かす規模・形式ではありません。
② 運用残高 ファンドの売買を通じた需給への影響 限定的です。日本株ファンドの純資産は約50億円であり、個別銘柄の出来高へのインパクトは小さいといえます。
③ アクティビスト運用 議決権行使・公開書簡・訴訟を通じた企業行動への介入 実際に影響しています。ただし竹内克也氏の担当領域ではなく、GAM Alternatives 側の運用です。
④ 言説・評価軸 「ROE」「クオリティ成長」「価格決定力」といった評価軸の浸透 中長期では無視できません。日本株の評価基準そのものに働きかけます。

経路③:GAM が実際に日本の個別株を動かした事例

経路③は「限定的」ではありません。具体的な事例が公開されています。GAM Alternatives が運用する GAM Japan Special Situations ファンド(運用担当:Albert Saporta 氏、Randel Freeman 氏)は、2025年12月から2026年にかけて、日本の上場企業を相手に異例の株主行動を展開しました。

日付 内容
2025年12月22日 Yutaka Giken 会長宛に公開書簡。インドの Samvardhana Motherson International による TOB 価格が非影響前株価比プレミアムわずか6.4%である一方、独立算定機関が参照した類似案件の平均プレミアムは28.7%である点を指摘。複数指標による評価では提示価格より少なくとも50〜70%高い価値が示唆されると主張
2026年1月21日 2通目の公開書簡。少数株主保護の欠如を指摘し、株主総会での議決を要求
2026年1月27日 3通目。支配株主である本田技研工業の取締役会長宛。本田が Yutaka Giken の50.65%を1株1,470円で売却する一方、少数株主への TOB 価格は3,024円である点を「支配株主がプレミアムではなく50%のディスカウントで売却している」と批判。Yutaka のネットキャッシュ422億円、有形簿価1,002億円に対し、100%評価額が220億円と示唆される点を問題視。本田の自己株式約26%の即時消却も要求
2026年2月6日 Yutaka Giken 取締役会が株式併合(スクイーズアウト)を決議
2026年3月2日 GAM Multistock – Japan Special Situations が、株式併合の差止めを求める仮処分を静岡地方裁判所浜松支部に申し立て

この事例は、外資系運用会社の株主行動が、日本の上場企業の買収条件とガバナンスに対して現実的な圧力をかけうることを示しています。ただし注意すべきは、これは GAM Alternatives の運用であり、竹内克也氏が所属する日本株式チーム(Specialist Active)の活動ではないという点です。GAM 自身もプレスリリースで「本件は当該ファンドの投資目的の通常の遂行であり、GAM Investments の会社としての施策ではない」と明記しています。

経路④:言説による影響

竹内克也氏を含むチームが2025年の振り返りとして示した「ROE 改善が株価パフォーマンスの重要な触媒になる」「新規投資では ROE 向上への真摯なコミットメントが依然として重要な選定基準」という枠組みは、実際に日本の企業行動と整合的です。東証の要請を背景に自社株買いが急増し、ROE と資本効率が日本株の評価軸として定着しつつあるという観察は、同チームだけでなく複数の大手運用会社が共有しています。

この経路の影響は、特定銘柄の株価ではなく「どの企業が評価されるか」という基準の形成に現れます。個別の記事が直接株価を動かすわけではありませんが、機関投資家のスクリーニング基準が変われば、中長期の資金配分が変わります。この経路が、竹内克也氏の見解が日本株に与える最も実質的な影響だと考えられます。

06セクター別・銘柄別の影響や意図

6-1 セクター別の方向性推論

竹内克也氏の公表済み見解を、セクター判断に落とすと以下のようになります。これは同氏の推奨ではなく、公表された分析枠組みから導かれる方向性です。

追い風と整理される領域
  • ▸半導体製造装置(とくに後工程の研削・ダイシング)
  • ▸ファクトリーオートメーション、ロボティクス
  • ▸医療機器・ヘルスケア機器
  • ▸デジタル決済
  • ▸価格決定力が高く、ROE 改善へのコミットメントが明確な企業(セクター横断)
逆風と整理される領域
  • ▸自動車・自動車部品(円安恩恵の終了、値引き増加)
  • ▸商社(商品市況・サプライチェーン混乱の正常化)
  • ▸銀行(日銀の政策転換期待の織り込み完了)
2026年初時点の公表組入上位には銀行と自動車が含まれており、2024年9月の「アンダーウエイト」記述と単純には整合しません。セクター判断の手がかりとして使う場合は、必ず最新の月次運用報告書で実際の配分をご確認ください。

6-2 銘柄レベルで確認できること

竹内克也氏が名指しで言及した銘柄は、公開情報の範囲ではディスコ(6146)のみです。2024年11月の記事で、半導体後工程における70〜80%の市場シェア、売上の40〜50%が継続収入・高マージンという事業構造、AI データセンター向けの高帯域メモリ需要による研削装置の需要増を見込み、同社株価が2024年夏に50%下落した局面を「長期的な買い場」と位置づけました。

一方、ファンドの公表組入上位10銘柄(2026年1月31日時点)は以下のとおりです。ここで注目すべきは、ディスコが7.04%で最大の組入銘柄になっている点です。同氏が2024年11月に「買い場」と述べた企業が、約1年後の公表組入でトップに位置しています。ただし、これは記事の影響ではなくチームの投資判断の結果であり、因果関係を示すものではありません。

順位 銘柄 組入比率 竹内克也の言及との関係
1ディスコ7.04%2024年11月の記事で名指しで言及
2東京エレクトロン6.47%同記事で前工程の代表例として比較言及
3ファナック6.27%構造的テーマ(FA・ロボティクス)に該当
4オリックス5.85%言及なし
5三菱UFJフィナンシャル・グループ5.52%2024年9月の記事では銀行はアンダーウエイトと記載
6三井住友トラスト・グループ5.16%同上
7ミスミグループ本店5.08%構造的テーマ(FA)に関連
8マキタ4.77%言及なし
9スズキ4.73%2024年9月の記事では自動車はアンダーウエイトと記載
10信越化学工業4.39%言及なし
銘柄情報を扱う際の必須の注意

GAM は記事の免責事項で明記しています。「言及された証券は、読者が提示されたテーマを理解しやすくするために選ばれたものであり、いかなるポートフォリオが保有していることを意味せず、売買の推奨でもない。記載された投資判断が収益を生むと仮定してはならない。」

また、本稿で示した組入情報は第三者集計サイトによるもので、特定日時点のスナップショットにすぎません。均等ウエイト・年1回リバランスという運用方針を踏まえると、記載された比率は時間の経過とともに変動しています。この情報を売買判断の根拠にすることはできません。

07影響を過大評価しないための4つの理由

「竹内克也氏の見解が日本株を動かす」という期待は、4つの理由で構造的に制約されます。

1
運用会社の規模
GAM の AUM は127億スイスフラン(約2兆円規模)です。日本の株式市場全体(時価総額約1,000兆円規模)から見れば極めて小さく、まして日本株ファンドは約50億円です。
2
発信の形式
公表されている記事はプロ投資家・機関投資家向けの情報提供であり、売買推奨ではありません。冒頭に免責事項を置き、個別銘柄の推奨を明確に否定する形式をとっています。
3
共著という性質
記事はチームの見解として発信され、署名も複数名です。「竹内克也氏個人の見解」として切り出せる部分は限られます。
4
発信頻度の低さ
公開されている署名記事は2024年の2本のみで、2025年以降の同氏単独の新規発信は確認できません。継続的な情報発信による市場への影響という経路は、現状では成立していません。

したがって、同氏の見解の価値は「相場を動かす材料」ではなく「判断の枠組み」として捉えるのが妥当です。すなわち、日本株を見るときにどの指標を重視し、どのセクターを構造的成長と見なし、どのリスクを織り込むか、という思考の型を提供している点に意味があります。

08反証シナリオ

竹内克也氏の枠組みが機能しなくなる条件を、あらかじめ列挙しておきます。所属チームの2026年見通し自体が、これらのリスクを明示しています。

シナリオ チームが示した認識 評価軸への含意
米国経済の後退 日本の利上げサイクルが早期に終了し、スタグフレーションのリスクが高まる クオリティ成長株の相対優位が崩れ、短期はバリュー優位に戻る可能性
円安の長期化
(160円超)
輸入物価への影響が介入を招く水準。食料インフレが粘着化し、実質賃金のプラス転換は2026年も不確実 価格決定力の弱い企業の収益が圧迫され、内需関連の選別が厳しくなる
財政拡張と日銀への政府介入 「より高く、より長い」インフレ、国内成長潜在力の低下、外需依存度の上昇。債務対GDP比はアベノミクス期の約230%から2020年に約260%へ上昇し、財政余地は縮小 資産価格は支えられるが、企業収益の質は悪化しうる
米国の通商政策の変動 保護的関税・厳格な移民政策・拡張的財政がサプライチェーンの分断を加速。輸出依存セクターにリスク。一方、技術力・適応力・革新力を持つグローバル企業は米国中心の新産業エコシステムへの統合で恩恵を受けうる 輸出企業を一括りにせず、グローバル展開企業と内需依存企業で分ける必要
規制改革の停滞 アベノミクスの最大の欠点は既得権益に阻まれた規制改革の限界。実質的な規制緩和の実現可能性は低いと評価 「改革による再評価」を前提とした投資仮説の持続性に疑問

09まとめ

本稿の結論は、次の3点に集約されます。

第一にご本人は GAM について何も公表していない
竹内克也氏は GAM Investments の会社としての現状・将来について、何も公表していません。この点を曖昧にしたまま「竹内克也氏の GAM 論」を語ることは、事実誤認につながります。同氏の公表済みの立場は、あくまで日本株式チームのアナリストです。
第二にGAM 自身は転換点にある
2年間の変革でコスト構造を圧縮し、H1 2026 の実質税前損失を30%改善、AUM も125億から127億スイスフランへ増加させました。Alternatives が成長を牽引し、日本株が属する Specialist Active は残高の約77%を占めるものの資金は流出しています。依然として赤字であり、株主からの融資枠と継続支援に依存する構造は変わっていません。
第三に影響は経路によってまったく異なる
情報発信と運用残高を通じた影響は、会社規模とファンド規模から見て限定的です。実際に日本の個別株の条件を動かしているのは GAM Alternatives のアクティビスト運用であり、それは同氏の担当領域ではありません。最も実質的な影響は、ROE やクオリティ成長といった評価軸の形成という中長期の経路にあります。

日本株のセクター判断に同氏の枠組みを使う場合は、2024年9月の「銀行・自動車・商社はアンダーウエイト」という記述と、2026年初の公表組入上位に銀行・自動車が入っているという事実のギャップを、未解決の論点として認識しておく必要があります。

10よくある質問

Q竹内克也は GAM Investments の経営について発言していますか?
公開情報を確認した限り、発言の記録はありません。同氏の公表済み発信は、所属する日本株式チームの投資見解(2024年9月・11月の記事)に限定されています。本稿の「GAM 論」は、GAM の公開開示と同氏の分析枠組みを突き合わせた編集部の推論です。
Q竹内克也の見解は日本株の株価に影響しますか?
経路によって異なります。プロ投資家向けの記事という形式と、日本株ファンドの純資産が約50億円という規模から、情報発信と需給を通じた直接的な影響は限定的です。一方、GAM のアクティビスト運用は実際に日本の個別企業の買収条件に影響を与えた事例があり、また ROE 重視の言説は中長期で日本株の評価軸を形成しうると考えられます。
QGAM の日本株事業はどのくらいの規模ですか?
GAM の AUM は2026年6月末で127億スイスフラン、うち Specialist Active が98億スイスフランです。日本株はその中の一事業領域で、旗艦ファンド GAM Star Japan Leaders の純資産は第三者集計で約49億〜52億円とされます。Specialist Active 全体の1%未満にあたります。
Q竹内克也が名指しで言及した銘柄はありますか?
公開情報の範囲ではディスコ(6146)のみです。2024年11月の記事で半導体後工程の市場シェアと事業構造を評価し、株価が50%下落した局面を長期的な買い場と位置づけました。ただし GAM は、記事で言及した証券は例示であり保有や推奨を意味しないと明記しています。この情報を売買判断の根拠にすることはできません。
出典と免責
本稿は GAM Holding AG の H1 2026 決算リリース・定時株主総会資料、GAM Investments の公式ページおよび公表済み市場見解、第三者集計サイトのファンドデータなどの公開情報に基づく分析記録です。投資助言や特定銘柄の売買推奨を目的とするものではありません。文中の「推論」と明示された部分は編集部による解釈であり、竹内克也氏ご本人の見解ではありません。掲載内容は執筆時点の情報であり、予告なく変更される場合があります。